WP-D Week 3日目 本日はデザインについてでした。
僕が恥ずかしげもなくデザイナーを名乗ってたのはもう随分前で、今は基本的に業務でデザインをすることは無くなってしまいましたが、第一線のデザイナーが何を考え、どういう意図でデザインしているのか、そこら辺について興味深くお話をうかがいました。
北村崇さん
デザインにあたって、目的やそこに至るためのノウハウ、これまでに生じた問題などについてお話されました。
ロゴデザインなどはやはりかなりのパターン数を出すとのこと。
採用されるのは一つだけど、そこに至るのにとんでもない量の試行錯誤があるので、ロゴ一つ数十万は全然安いほうだと改めて思いました。
仕事としてデザインを捉えたことがない一般的なクライアントにはロゴ一つが数十万〜数百万するという事実はすごく受け入れ難いことのようで、数十万で制作するブログに毛が生えたようなデザインレスなサイトで、ロゴちょこちょこっとつけといてくれない?なんて言われる身としては、ほんと「デザイン」っていう言葉も仕事も、難しいなあと改めて思いました。
後出しで条件を言われて一から練り直す必要が生じたりとか、安定と先鋭などの相反する要素両方を内包することを求められたりとかはわりと日常的なようで、そういうあたりはもうどの業種のどのフェーズでも生じる問題だなと思いました。
でまあ、納期と予算というのもやはりどの業種でも必ずついてまわるもののようで、今更そこに文句つけること自体がナンセンスとでも言うべき風潮さえありますが、やはり、そういうところは業界全体でなんとか改善できないものなのかなあと考えてしまいます。
後藤賢司さん
ノンデザイナーや、初級者中級者の人に向けた、デザインの方法論的なことをお話されました。
僕の言葉でざっくりまとめると、デザインにはツール(媒体?)によって種類と役割があって、そのツールで効果を最も上げるデザインをちゃんとすることが大事、という内容でした。
具体的な例として、看板、ノボリ、コーナーディスプレイ、プライスカード、ポスター、チラシ、展示会のブースなどについていい例悪い例を挙げて説明されました。それぞれに最適な時間と距離感をきちんと理解してデザインすることが大事で、それは話しかけることに等しく、要はデザインとはコミュニケーションである、とのこと。
「カッコいい」「美しい」必ずしも正解なわけではない。
時間と距離を制する者はデザインを制す。
まずは与えられた時間と最適な距離感でのメッセージを伝えるように
これからデザインを学ぶ人はまずはそれを考えるようにして、その後タイポグラフィやレイアウトを学べば良い。
座談会
某社のチラシなどについて。
既定のフォーマットに基づいて安心感を与える作り。
既にあるものを流行らせて独占するのが強みな会社
ダウンジャケットのシェアをほぼ独占していた時期もあったそうな。
黄金比、白銀比など使う?
最初からそれありきではなく、ある程度練り込んだものに、それを要素として調整に使うことが多い。
黄金比などを使ったデザインは単純になりやすいので、提案として通りづらくなるような。
某タレントのロゴデザイン
デザインとしては嫌いではないし、綺麗にできていると思う。
ただ、ロゴマーク等は使いみちなども考えたうえでのデザインが必要だし、そういう観点からはなんとも言えないかも。
メキシコオリンピックのロゴデザインなど、まずデザインの基礎やフォントを作成し、それに基いてあらゆる形に展開していった例もある。デザイナーは、その後の展開や文化面にも配慮したデザインをするのが望ましい。
電車内広告など
吊りと貼り付けで同じデザインを使うのは微妙。でも予算的に別のデザインにすることもなくて、デザイナー的にはやりづらそうと思う。
デザイナーのツール
やはりアドビは使う。
フォントが一番使うツールと言える
ウェブになってからはむしろフォントは使わなくなってきて、
使うとしてもgoogle web fontとかになってきた。
アパレル系とかには飛び道具的にマニアックなフォントを持ってる。
最近のウェブはUI,UXに基いて評価されるので、要素に理由が無いとダメという風潮がある。
それを逆手に取ってなぜここにあるのか、という説明で顧客を論破してデザインを通すことがある。
説明ができるというのは必要。
デザイナーはキャリアアップがしづらい。
エンジニアのように、新しい言語を憶えたからそれがキャリアとしてすぐにステップアップに通じるようなことがない。
某コンテンツ販売会社のサイト
コンテンツの画像が様々で、それを見てもらうことがそもそもの目的なので、ブランド色のようなものは抑え気味に、白黒で構成してる。
普通はこれを綺麗とは言わないかもしれないけど、デザイナーの意図を踏まえて見ると綺麗で、レベル高いデザインだと思う。
デザイナーは口が達者?
コミュニケーションはとても大事。
お客さんの要望などを的確に引き出すことは必要
某業種の各社サイトを比較検討
基本いいとこを探すベースで。
「否定は誰でもできる」
それぞれ訴求したい年齢層ごとにデザインを絞っている印象
全体的に白黒ベースが多いが、商品自体が地味で多数の商品を載せるから、自然とそういうことになるのかも。
サイトを作った人と、更新する人が違う可能性がちらほら。
更新する人は、元のデザイナーの意図を汲みとって作業してほしい
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ざっと書くと以上のような内容でした。
個人的に感じたのは、第一線のデザイナーはやはり目的や意図を持ってデザインしていて、それぞれのデザイン要素について、それが必要である説明をちゃんとできるのだということ。
僕はコードに落としこむ部分を担当することが主だから、デザインに意図が感じられないのに無駄に凝っているときに、これはあなたの作品ではないし、これはウェブだからそれを理解した上でちゃんとデザインしてほしいと言いたくなる時が多々あるんだけど、意図や目的があって、それを明確に説明できるのなら、デザインをお客様に通しやすいし、また、変更に対する対応も論理性が出てくるし、もっと業務自体がスムーズに行くような気がします。
でも、このセッションの中でも何度か出てきた言葉で「上からの力が」というのも避けられない要素としてあいかわらす存在して、結局ある程度はケースバイケースとしてしか対応のしようがないのかな、とも思いました。
それはここ何日か聞いててずっと共通して思っていることで、語られる全ては理想だし、そうできればいいなと思うけれど、それを自分の実務にちゃんと落としこむには、もう少し業界の成熟とか、自分自身のブランディングとかが必要なのかなあという気はしています。
そして明日はマーケティング。
ウェブは結局何をやるかが大事で、一番求められてるのは実はマーケティングではないのかと感じることが最近多いので、自分がマーケティングに関わることは業務上殆ど無いんだけど、実は一番楽しみだったりもします。