シン・ゴジラ見てきました

もはやWebなんにも関係ないけど。シン・ゴジラを見てきてなんか書きたくなったのでここで。

とても面白かったです。以下、ネタバレを多分に含むので、未鑑賞の方はご注意ください。

シン・ゴジラというくらいだし、既存のゴジラとは一線を画すものだという認識で見に行ってはいたのですが、まずゴジラの造形に驚かされました。

まず水生生物として登場するのですが水中を移動する間は背びれや尾しか見えません。なかなかじらすなーなんて思いつつ見てるとやがて陸に上がりやっと姿を見せてくれるのですが、エラがあったり、体がヌメヌメと光っていたりとその様子は限りなく魚類+両生類で、えっ今回のゴジラこんなんなの?と度肝抜かれます。

ゴジラはかっこいいという先入観があるわけで、そこをぶっ壊すところからかー、庵野さすがだわーなんて思いつつ見てると、ゴジラなんとそこから立ち上がります。その時点でなんだか僕らの知ってるゴジラっぽくなってきます。生物としても雰囲気変わってきて、なんか爬虫類っぽくなりました。

おおそういうことか、と思っていたら作中で「どんどん進化する究極生命体」であることが言及されます。そして最終的にいつものゴジラになって、火や光線を吐き散らかして東京を火の海にします。

自分が住んでてしかも普通に行ったことあるところが蹂躙され、焼きつくされていく様子はなんだかすごく興味深くて、東京に住んでいるとこういう映画が倍楽しく見れるなあなんて思うと同時に、身近なところで災害が起こっているシュミレーションを見ているようなものでもあり、実際の災害が身近に起こったときに自分はどうすればいいか、なんてことも考えながら見ていました。

先の大震災の時僕は東京にいましたが、東京は命の危険があるほどには揺れなかったにも関わらず都市機能はそこそこ麻痺して帰宅難民が生まれたりしました。

今回映画でゴジラが破壊して回った都心部がもし地震に見舞われたとしたら、今空想の産物として眺めてるこの絵面と同じ状況は現実にも起こりうることであり、起きてないから今はのほほんと捉えてるけど、実際に起こる可能性がある事象としてもっとちゃんと心に留め置くべきことなんじゃないのかと感じました。

総監督の庵野さんはそういった有事の際の行政の対応を描くにあたって関係各所、例えば官僚とミーティングしたり、自衛隊の演習に参加したりして取材を徹底してディティールを作りこんだそうで、実際かなり細かく描かれていて、この映画の肝の一つになっています。

僕も以前国家公務員と関わる仕事に携わっていて、お偉い方達がなんらかの意思決定を行う場に出席する機会はあったのですが、この映画ではそういうとこの空気感がかなりリアルに再現されていると感じました。

災害時の行政の対応資料作成などに関わっている知人いわく、資料の中では災害対策室の机の配置や、備品の数、位置などについて全て細かく明記されているけれどそんなに細かく書く必要ある?と思ってたらしく、劇中で机が揃い、PCが揃い、と対策室が形作られていく流れを見て、ああこういう風に使われているんだなとすごくリアルに感じたと言ってました。

いわゆる「有識者」の描き方も抜群で、僕は生物学の分野でこの映画に出ていたような「有識者」と関わる仕事を実際していましたが、画面に出てきた瞬間にあまりのリアルさに吹き出しそうになりました。喋り方とか、内容とか、風体なんかもよくここまでリアルに表現したなと思うくらいリアルで、映画館で声を上げて笑いそうになりました。

さて話の流れとしては色々と政治的な駆け引きがありつつも、最後は日本の叡智を結集し、人脈の限りを尽くして物語は終息に向かうのですが、最後の最後で不穏な一コマを映して映画は終わります。

それについてネットで調べてみたらあくまでも推測として様々論じられてはいるものの、明確な回答はなされていないようです。そのあたりとても庵野さんらしいなと思います。そういうのを妄想して楽しんでくださいという贈り物みたいなもんなんじゃないかと捉えています。

そういう意味でひとつ個人的な妄想の限りを尽くすとすれば、赤坂の「全て里見さんの筋書き」というセリフは、実はゴジラ出現、都市破壊まで含めてのものなんじゃないの?なんて思っています。

牧がどうなったかは結局描かれていないけれど、もしかしてゴジラの出現は人為的な(もしくは人の行為が巡り巡って起こった)ものなのでは?という示唆はあります。

里見は他の政治家たちに言わせれば「何を考えてるかわからない」という不気味な存在で、ゴジラ出現時にはちょうど外遊に出ていて一人生き残りまんまと首相代理に就任し、事態を収束させて総選挙へと導きます。

劇中で日本をスクラップ&ビルドして建てなおすという表現がありました。ゴジラ出現時の閣僚は赤坂と矢口を除いて全員亡くなっているので上の方で蓋をしていた面々はもう居ません。既に出来上がりきって既得権益の温床となっていた東京の中枢部分は物理的に徹底的に破壊しつくされたので作り直すしかありません。

日本という国をスクラップ&ビルドするにはあまりに出来過ぎたシナリオなんじゃないか、なんて思います。里見がそこまで想定して描いたシナリオなんじゃ…とか、それに牧がなんらかの理由で乗ったんじゃ…とか考えて楽しんでます。誰か同じように感じている人はいないだろうか。

続編があるかのように見せかけて実は無い、なんてのは庵野監督の常套手段ですが、続き作ってほしいと思うくらいに、久しぶりに面白い映画でした、シン・ゴジラ。

オススメです。